あの日・あの時間・あの場所で! 〜君達に逢えた軌跡〜

プロローグ


夕暮れの帰り道。公園でたっぷりと遊んだ後のこと。
「おにいちゃん!まってよ〜(汗」
「ほら、早くしないと置いて行くぞ?」
「まって…がふっ…!!」
「え?がふって何だ…!?大丈夫か?!」
「だ…だいじょぶじゃない……うわぁん(泣」
「たく、ほら、乗って?」
「うぐっ……ひっく…うん…」
いつもお兄ちゃんの背中は温かくて、気持ち良くて。
転んだことや泣いていたことなんて忘れるぐらいに居心地が良かった。
―これは私だけの特別な場所―


「っ!?」
夢を見るのはいい。けど、どうして毎回同じ夢なんだろう。
眠りにつくと、必ず見る兄の夢。
兄はもういない…そんな生活に慣れたのに、最近になってからは昔の記憶が夢に出てくる。
(何で毎回…私…やっぱりお兄ちゃんのことが忘れられないのかな……)
私には兄がいる。…いや、いた。
兄は10年前、公園で一緒にかくれんぼをして遊んでいたときに居なくなった。
私が鬼の番になった時に大きな声で数を数えていた。暫くしてまだかと聞いた。何回も、何回も。
何度聞いても返事がなかったことを変に思った私は、その公園周辺を探しまわった。
でも兄はどこにも居ない。
兄がいない。そんな不安、淋しさから泣きながら帰ったのを覚えている。お兄ちゃんと繰り返し叫びながら。
その後のことは全然覚えていない。
ただ1つ…兄は絶対に帰ってこない。それを思っていたのは未だにはっきりと覚えている。
「この世にはいないお兄ちゃんのことをどう思おうと、お兄ちゃんは戻ってこないんだよ。なのに…なんで…」
兄がいる人に会うと、心のどこかが黒く染まる。
もちろん、私の大好きなあの人達兄妹を見た時でも…。
「はぁ…もう一回寝よう」
溜息を吐きながら布団にもぐる。夏でも掛け布団を使う自分。
少し肌寒いという事もあるが、何より、何もない空間に居るみたいにならなくて済むから。
(もう済んだ事なんだよ…それより今を生きよう)
心に区切りをつけて眠りにつく。しかし、自分では気付けなかった。
その時頬に、一筋の涙がこぼれていた事に。


「晃!いつまで寝ているの?!」
「う…ん…」
1階からの母の怒鳴り声に起こされた今日は、学校の日。終業式の日であった。
「うお、もうこんな時間なのか…」
時計を見ると、7時をとっくに回っていた。
「こ〜ううううううう!!!」
母の声はまだ響き続ける。
「ああああ!もう分ったから黙ってよ!うるさいの!」
「じゃあ早く下りて来なさい!もう30分もないのよ?」
毎朝のこんなやり取りでいつも思う事が一つ。

―今日も退屈でさみしい毎日が始まる―

あの事件から、何も変わりない日々と兄のいないさみしさだけが続く。
これは、そんな辛い事に耐えていく彼女のある物語。




――――
ここまで!
本当はもっと倍以上あるけどお終いです^^((
あ、俺には兄いませんよ?架空の人物ww